切れた振り子の行き先を思う。
飛ばされた先を、どこまで転がってゆくのか誰にも分からない。このまま世界に繋がれて隣り合う振り子と肩をぶつけ合っているのと、どちらが幸せだろうか。
僕と同じように虚ろな目をした男と肩をぶつけ合うようにして列に並んでいると、悲鳴に似た音を立てて鉄の蛇が暗がりから現れた。プシュウウウ……と空気の抜ける音を立て、脇腹にある無数の口を開く。蛇の胃の中では、やはり僕らと同じような顔をした大人たちがすし詰めになっていた。死んだ魚のような目とはよく言ったもので、きっと誰も彼も腐っていただろう。
乗車券の提示を求める駅員の前で、僕らは順番に溜め息を吐く。僕の口から出たそれはまだ所々白さを残してはいるものの、その大部分が灰色に濁っていた。陽の当たらない路地の隅で溶け残った一週間前の雪のように、それはまだかろうじて美しかった頃の面影を残しているだけに、余計に醜さが際立っていた。
駅員は無言で僕の次の乗客に視線を移す。要するに、僕には乗車資格があるということだ。
溜息の充満したこの鉄の蛇の胃の中で、変わることのない景色を、そこに映る自分自身を、眺めるともなく眺めている。間違い探しのように。そうしていれば、何か間違いが見つかるとでも思っているかのように。
この街には空がない。朝が、終わりが、始まりがない。でも僕はもう、それについていかなる感慨も持ち合わせてはいない。
今の僕を見て、君なら何と言っただろうか。
あの頃、僕らは大人になろうと必死だった。